品質管理部の石川です。
タイトルからしてよくわからないタイトルかと思いますが、コラムを書かせてもらおうかと思います。
私は家で料理をしますが、ここ最近天ぷらにはまっております。
おいしい天ぷらとはなにか、と言われれば、読んでくださっている人もイメージしやすいかと思います。
「サクッと軽い食感のころも、じゅわっとジューシーな具材。塩で食べてよし、つゆにくぐらせてよし。大根おろしを乗せてさっぱりもよし。」
こんな感じではないでしょうか。
こういった天ぷらを作るために必要な工程を考えると
①具材を常温に戻しておく
②衣を作る。小麦粉、たまご、水を溶き合わせる。
③具材を衣にくぐらせる。
④油の温度は180℃ 具材が浮き上がるまで揚げる。
といった工程(レシピ)が出来上がります。
もちろん細かいコツはありますが、ここでは割愛します。
ここまでただのレシピを書きましたが、私が言いたいのはそれは本質なのか?という点です。
実はめっきも似たような側面があります。
例えばめっき液です。
100Lのめっき液を作るとき、70Lの水を張って、Aの薬品5L、Bの薬品3Lを入れ、撹拌しながら100Lになるように水を足します。
めっき作業を行うときはめっき液温を25℃まで上昇させ、製品が入ったら電気を…
なんて、薬品の取扱説明書に書いてあります。
まんま料理のレシピですよね。
ただ、これは本質ではありません。
私どもはめっきのプロですから、レシピ通りにやって綺麗なめっきをできて当然なんです。
その作業の本質を理解しているか、ということがプロかどうかの境界線であると考えています。
先の天ぷらのレシピについてです。
サクッと軽い食感の衣、これを作るためにはどうすれば良いか?
衣はグルテンが形成されるともたついた仕上がりになります。
液化窒素で氷点下まで冷やした小麦粉を使ったり、冷蔵庫で冷やした水を使ったりして、なるべく混ぜずに混ぜ合わせるという方法があります。
ジューシーな具材はどうでしょうか?
油に入れれば火が入りますが、衣に火が通るタイミングで生だったりしてはいけません。
揚げすぎず、かといって具材の水分が飛びすぎず…この塩梅を考える一仕事が大切です。
油の温度は180℃は常に守られていますか?
具材は常温ですから、油に入れた途端油の温度は下がってしまいます。
油の量は具材に対して適切ですか? 温度は下がりませんか?
つまるところ、天ぷらは揚げ料理でありながら、具材の蒸し料理でもあると考えています。
衣は揚げ、具材は蒸し。
この異種混合な調理方法こそが天ぷらへの情熱を掻き立てますね。
閑話休題
話がそれましたが、めっきについても同様だと思っています。
脱脂工程を経た素材はどのような状態か。
エッチング工程では、金属の目に見えないミクロの視点でどのように変化しているか。
デスマット工程は、活性化は、フッ酸系の処理は必要か、電解は脱脂だけでいいのか酸工程にはいらないのか。
数ある金属への化学的処理の中から、その効果、影響を考えながら丁寧に考え抜いて工程を決められること。
これがめっき屋のプロだと思っています。
私のいる品質管理部はレシピを作るようなものです。
製品に最適なめっき処理を行えるかを現場に周知し、徹底させる仕事です。
そういう意味では天ぷらとめっき、プロフェッショナルとしての仕事の目線はあまり変わらないのかもしれません。